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2007年4月

2007年4月12日 (木)

第8話 (by山田優子)

う〜ん。米田君にあの本を渡したのは間違いだったのかなぁ・・・
いっそのこと渕田君に渡した方が・・・。

家に帰ってからも友子はぐるぐると頭の中で考え込んでいた。
いくら植毛の事で頭がいっぱいの米田君でも、あの手紙に気付かないわけがない。
でも・・・でも・・・思い切って史江に相談してみようか?
きっと史江の事だからいい解決法を見つけてくれるはず。
でももしかして史江も・・・!?
史江がすばやく取り出した「アレ」は間違いなく友子にも見覚えがあったのだ。
ああっどうしよう・・・

トゥルルル〜 トゥルルル〜♪
「うわぁぁぁぁっ!」あまりにも突然の電話の音に友子はイスから転げ落ちてしまった。

「も、もしもし・・・?」やっとの思いで受話器をとると

「あ、俺、渕田だけど・・・」

「えぇぇっ!渕田くん?」

マライア・キャリーもびっくりの7オクターブのこえで答えた。

2007年4月 3日 (火)

第7話 (by斉藤ふみ)

「その本、待ったぁ。」

史江は、間違いなくここ数年で一番速い速度で走りながら米田めがけて走っていた。

アレがもし誰かの手に渡ったりしたら、ずっと隠してきた史江の計画が台無しになってしまうからで、大人になってその夢が達成されるまで史江は誰にもそれを知られたくなかった。

史江はあと一歩で米田に届こうというところで地面を蹴り軽くジャンプをした。

「ライダーキックッ!!」

「うげエッ。」

史江の得意なキックが見事に決まり米田は宙を舞っていた。そして米田が友子から受け取った本はその拍子に史江の手にスッポリと収まっていた。

「はあ、危ない危ない。ごめんね友子、びっくりしたでしょ? 私大切なものを本に挟んでおいたの忘れててそのまま友子に本返したの。うっかりしてて。・・・ああ間に合ってよかった。」

史江はパラパラとページをめくり、挟んでおいたアレを素早く取り出した。その瞬間、別のページにもうひとつ何かが挟まっているのを確認したけれど、史江はそれには気付かないふりでパタンと閉じた。

「史江なにか挟んでたの?私こそごめん。全然気付かなかった。」
友子はクスクスと笑いながら史江から本を受け取った。そして立ち上がった米田に再び、さりげないしぐさでその本を渡した。

「いってぇなぁ。史江、それやめろって言ってるだろう?なんでそんなに綺麗なのにお前、そうなんだよ。もう少し女らしくしないと、彼氏が出来ても愛想つかされるぞ。」

「ほっといてよ。こんなんで振るような人、こっちからお断りよ。それより米田くんにその本の深みが理解できるとは思えないけど。まあせいぜい時間かけて読むのね。まったく、友子がなんで米田くんなのか私にはわからないわ。」

「もうっ、そんなんじゃないんだってば」
友子は顔を真っ赤にして叫んだ。

「そう?じゃあね、私急ぐから」
史江は、キックのときに飛んでしまった靴を取りに行き、そのまま後ろ手に手をふって校舎のほうへ戻っていった。

「あいつも誰かにチョコレート、渡すのかなぁ。」

振り返りもせずに歩いていく史江をみながら、淵田がぽつりと言った。

「しらねえ。あいつ、絶対、前世男だ。」

友子は、二人の話にうなずきながらも、米田が握っている本のことで、その中に挟まっている手紙のことで、頭がいっぱいだった。