「男女4人ラジ★ゴン物語」_

2007年3月 1日 (木)

第6話 (by米岡誠一)

2月だというのにその朝は、桜も開花しようかという程暖かい陽が降り注いでいた・・・。


「オイッス!」
米田が似ていない「いかりや長介」のモノマネで渕田に声をかけた。
「今年も野球部の部室には山のようなチョコレートが届けられるんだろうな」
「植毛部だってまんざらじゃないだろ?」
そう言って渕田は校門のほうへと目をやった。
「あっ、山本だ!!」
校門の前で山本友子が何かを胸に抱えてこちらを見ている。
「渕田、お前に告白するつもりじゃないのか?」
「まさか」
そんな話をしていると山本友子が米田と渕田の所へ少し照れくさそうに近づいてきた。
「はい、コレ」
山本は米田の前に立ち、何かを手渡した。
「何?えっ、俺??」
隣で渕田がニヤニヤと笑っている。
しかし・・・山本が米田に手渡したのは手紙でもなくチョコレートでもなく、一冊の本だった。
「米田君に読んでほしいの」
米田は本のタイトルに目をやった。

「・・・一本どっこの旅がらす・・・」

米田がその本を開こうとしたその時
「ダメ!見ちゃダメ〜!!」
大声を上げ、佐藤史江が駆け寄ってきた。

2007年2月19日 (月)

第5話 (by BUTCH)

2月15日。福岡競艇場。福岡地区選手権をかけた最終日12レース。鳥飼眞が優勝を決めた瞬間、淵田は小さく「うりゃぁ…!」と声に出すと、3連単「1-4-5」と印刷された舟券に軽く唇を当てた。これで300万になる!興奮を隠すように換金の列に並ぶ。
淵田はギャンブルで生計を立てる身となっていた。かつて野球選手だった彼は、ホークスのドラフトにも名を連ねる程の名プレイヤーだったが、生来の喧嘩っ早さと酒癖の悪さ、そして何よりもギャンブル癖が災いし、球界を去るはめとなる。
今日もうまく大金を手にした淵田は、ふとあの日の昨日、つまりあの年のバレンタインデーのことを思い出した一一。

2007年2月 8日 (木)

第4話

「本当に気付いてないかしら・・・」

米田との電話を切った後、友子は少し不安になった。

10年もの間アジア各地の旅を続け照りつける太陽、緑濃い大地、可憐な花・・・
人々の笑みや雑踏までもが失恋した友子の心を癒してくれた。

もちろん恋愛もしてきた。

タイでは象使いに、インドではヘビ使いに、中国では上海雑技団のスターに求婚されたが
どうしても「あの人」の事を忘れられない。

「やっぱり米田君にあの本を返してもらわなくては・・・」

卒業式の日、米田に貸した本の中に大切な手紙を隠していたのだ。
そこに書かれている「何か」をどうしても確かめたい・・・

3年間過ごした韓国、付き合っている韓流スターとの別れを心に決め
友子は帰国の準備を始めた。

「やっぱり、あの人に会いたい・・・。」

2007年1月29日 (月)

第3話

「ふふふ、久しぶり。元気してた?私の声、忘れちゃったかと思った。」

文江はリビングで、パソコンの画面を見つめながら、米田の懐かしい声を聞いていた。

「忘れるわけないよ。奇跡の八頭身といわれた美しい文江の声を、俺が忘れるはずないだろう。」

「何言ってるの。アメリカに行って、口がうまくなったんじゃない?まあ、米田くんが私に惚れてたのは知ってたけど。植毛の成功で、金髪のお姉ちゃんでもはべらしてるんじゃないの?」

「な、何言ってんだよ。仕事が忙しくてそれどころじゃないよ。で、なんだよ。まさか君まで俺に、同窓会に来いって言うんじゃないだろうね。」

「えっ、誰かから、連絡があったの?」

2007年1月18日 (木)

第2話

渕田がそんな思いを巡らせていた頃、米田はニューヨークにいた。
植毛技術で念願の特許を取り、そのロイヤリティでそれなりの良い暮らしをしている。

「ナニ?ソノエアメール ドウソウカイ?ナニ?」

美しいブロンドの髪が胸元まで伸びたその女が米田の顔を悪戯っぽく覗き込んだ。

「いや、何でもないんだ」

米田はそう言ってエアメールをゴミ箱に投げ入れようとした・・・その時・・・
携帯電話が着メロのビギニングを鳴らした。

「ハロー」

米田がそう答えると、少しの間の後、どこか聞き覚えのある懐かしい声が耳に飛び込んできた。

「しばらくね、来るんでしょ?同窓会」


「誰?もしかして?君は・・・」

2007年1月 9日 (火)

第1話

「男女4人ラジ★ゴン物語」

福岡県にあるラジゴン高校を卒業した男女4人の物語。

渕田利幸(ふちた・としゆき)
佐藤史江(さとう・ふみえ)
米田誠二(よねだ・せいじ)
山本友子(やまもと・ゆうこ)
4人は、高校を卒業して、それぞれの道を進んでいた。
高校時代の関係、そして卒業してから一体どういう道を進んできたか・・・



渕田利幸は2007年初めての朝を少し憂鬱な気分で迎えていた。
間近に迫ったラジゴン高校の同窓会に出席するべきかどうか。


10年振りに再開するはずの懐かしい顔ぶれを思い浮かべながら寝起きの少し冷めたコーヒーを一口飲んだ。

ヤンキーから足を洗い中華料理店に勤めている佐藤史江。

「世界一の植毛技術を身につけるんだ!」が口癖だった米田誠二。

初恋に破れた後、男性不振に陥りアジア各地を旅していると噂の山本友子。

二口目のコーヒーを飲もうとカップを顔に近づけたとき、そのカップに映った自分の顔を見て渕田は決心した。
やはり出席しようと。


「あいつに会いたい・・・」